皆さんはゲームがどのように作られているかご存じでしょうか?
「プログラムを組んだり、キャラクターや3Dのデザインをしているんでしょ!」という方が多いと思います。しかし、それらの工程を経て出来上がったゲームを実際にリリースするには、もう1つとても大事な工程があります。それが「QA(品質管理)」です。
今回は、「ゲーム業界でのQAってどんな仕事?」といった基本情報からテスター・QAエンジニアとの違い、「好きなゲームを仕事にしたい!」という方に向けて、必要な知識や経験・将来性などまでご紹介していきます!
QAとは
そもそもQAとは「Quality Assurance」の略で「品質管理」という意味を持ち、ゲーム業界では「デバッグ」「テストプレイ」とも呼ばれます。
製品やサービスが求められている品質に達しているかを証明する活動のことを指し、ゲーム業界のみならずさまざまな業界に存在する仕事です。
そして、QAを行う人をQAエンジニアやデバッガー、テスター(※)と呼びます。
※本記事では、QAエンジニア・デバッガー・テスターをまとめてQA職とします。
QAの仕事内容
ゲーム業界のQAの仕事内容は、開発途中のゲームをプレイし、仕様書通りに動作しているか、バグと呼ばれる不具合が起きていないかを確認することで、具体的には以下の4つを行います。
①仕様通りに動作するかの確認
まず、あらかじめ定められたテスト項目を用いて、仕様通りになっているか、ねらった動作をするかを確認します。
例えば、「キャラクターが箱を壊す場合、素手では壊せないが武器を使用することで壊せる」という場合、素手と武器を持った状態をそれぞれ検証します。
また、プレイヤーの想定外の行動によってバグが起こらないよう、1つの部分に対してあらゆるパターンを想定し繰り返し作業を行います。
②操作の確認
操作の確認では、キャラクターの動きや画面の切り替えが正常に行われるか、一連の動作がスムーズにできるかを確認します。
また、操作性を確認する際に、画面内のボタンは正しく押せるかといったUI(画面の構成)に問題がないかもチェックします。
③発見したバグの報告
上記の確認でバグ(不具合)や修正点があった場合、レポートにまとめてプログラマーやプランナーに報告します。
報告を行う際は、「いつ・どのような場面で・どのような動作を行ったときにバグが発生したか」を正確に報告することが重要です。
④バグの修正
バグの報告後は、実際にバグの修正を行います。
企業やプロジェクトの規模、バグの複雑さによって、デバッガーやテスターがそのまま修正を行う場合と、プログラマーやエンジニアが修正を行う場合があります。
QAエンジニア・デバッガー・テスターの違い
ここまで、QAの仕事内容をご紹介しましたが、QAエンジニア・デバッガー・テスターとはどのような点で異なるのでしょうか?
より詳しい仕事内容を例に違いをご紹介します。
ただし、QAエンジニア・デバッガー・テスターは企業によって呼び方が異なったり、ひとくくりにされている場合もあるため、気になる求人がある際は、業務内容の部分をチェックしましょう。
QAエンジニア
QAエンジニアは、テスト計画や項目の計画・実施・管理、テスト環境の構築、関連部署との調整などを行います。
主に、デバッグを行うための準備や、チームの進捗管理、レポートの報告を含む他の開発者との調整がメインになり、デバッグをより効率的に行うための自動化システムの構築まで行う場合もあります。
そのため、プログラミング知識はもちろん、サーバーやインフラに関する知識・技術が求められます。
デバッガー
デバッガーは、テスト項目に沿ったテストプレイはもちろん、発見したバグの報告・修正まで行います。経験を積んでデバッグリーダーなどのリードポジションに就いた際は、QAエンジニアと一緒にテスト項目を作成したり、チームメンバーの進捗管理なども行います。
プログラミング知識は必須ではありませんが、プログラミング言語が扱えることが歓迎される求人も多くあるため、身に着けておくことがおすすめです。
また、QAエンジニアが行うことのある「テスト環境・効率化させるシステムの開発」までは行わない点で異なります。
テスター
テスターは、テスト項目に沿ったテストプレイを行います。
バグをまとめたレポートの作成は行いますが、実際に修正まで行うことはあまりないという点でデバッガーと異なります。
プログラミング言語などは基本的に求められないため、ゲームが好きな方であれば比較的誰でも挑戦しやすいといえます。
「ゲームデバッグはきつい」は本当か
「ゲームデバッグ」で検索すると、「きつい」「やめとけ」というワードを一緒に目にする方も多いのではないでしょうか。
ゲームデバッグは、座りっぱなしの状態で1つのゲームの同じ箇所を繰り返し何度もプレイするため、身体的・精神的にきついと感じやすい方もいます。
しかし、未発表の新作をいち早くプレイできたり、自分がバグを発見し修正することでユーザーが快適にプレイできるというやりがいもあります。
▼「ゲームデバッグはきつい」についてはこちらの記事で詳しく解説しています!
ゲーム業界のQA職になるには
QA職はゲーム業界未経験でも挑戦可能です!
テスターやデバッガーは、正社員の求人はもちろん、未経験者歓迎のアルバイト・契約社員・派遣社員の求人も多くあるため、未経験はもちろん知識が全然なくてもチャレンジしやすいでしょう。
▼ゲームテスターになる方法はこちらの記事で詳しく解説しています!
もちろんデバッグを行うにあたり、プログラミングができたり、知識があるに越したことはありませんが、求人によっては「1つのゲームをやりこんだ経験のある人」や「熱意をもって仕事に取り組める人」など、特定のスキルや知識・経験がなくても応募できるものもあります。
高度な技術が必要な3Dモデラーやエンジン開発に比べると、特別なスキルや経験が不要でも挑戦しやすいため、「ゲーム業界への入口」ともいえる職種です。
QA職で求められるスキル
デバッガーを目指す方はもちろんですが、キャリアアップを目指す方も身に着けておくとプラスになる知識・スキルを3つご紹介します。
①プログラミングスキル
デバッガーは、直接プログラムを修正することがあるので、プログラミング言語の構造や特徴を把握しておくとよいでしょう。
「何の言語を学んだらいいかわからない!」という方は、ゲーム開発エンジンの言語として多く使われている「C#(Unityで使用)」「C++(UnrealEngineで使用)」あたりから始めてみるとよいかもしれません。
▼ゲーム業界を目指す方におすすめのプログラミング言語はこちらの記事で詳しく解説しています!
②ソフトウェア開発・テスト技法に関する知識
必要に応じてシステムの開発工程に関して提案を行うこともあったり、必要なテストの内容を決めたり設計をする必要があったりするので、ソフトウェア開発やテストを行うさまざまなツールについても理解がある必要があります。
特に、QAエンジニアを目指している方は積極的に身に着けると良いでしょう。
③マネジメントの知識
マネジメントの知識は、QAリーダーやプランナーを目指す方が身に着けておくべき知識です。
キャリアアップの部分で触れましたが、デバッガーからプランナーになる前に、QAリーダーを経験することはもちろん、他業種でもプロジェクトマネージャーなどで「チームをまとめたことがある」とアピールポイントになるといえます。
ゲームプランナーはエンジニアやデバッガー、予算を管理する部署などさまざまな人と関わり、チームとしてまとめる必要があるため、この能力が重要になってきます。業務中も積極的に社内の人とコミュニケーションをとることで、多職種への理解も深めることができます!
QA職におすすめの資格
QA職、特にQAエンジニアを目指す方におすすめの資格を3つご紹介します。
いずれもQAエンジニアになるのに必須ではありませんが、中には以下の資格を持っていることが歓迎される求人もあります。
①ソフトウェア品質技術者資格認定(JCSQE)
一般財団法人日本科学技術連盟が主催する、ソフトウェアの品質向上に関する知識を認定する資格試験です。試験は初級・中級・上級の3つのレベルで構成されています。現在は初級と中級の2つが受験可能で、今後上級が追加される予定です。専用の参考書籍や問題集が出版されているので、試験学習を進めやすいというメリットがあります。
②JSTQB認定テスト技術者資格
JSTQB(Japan Software Testing Qualifications Board)が主催する、ソフトウェアのテスト技術を認定する資格試験です。試験は「Advanced Level」と「Foundation Level」の2つのレベルがあり、レビュー評価からソフトウェアテストに関する知識など、品質管理に関わるさまざまな知識が問われます。
JSTQB認定テスト技術者資格は、アメリカ、イギリス、ドイツなどのISTQB連携のテスト技術者資格と相互認証を行なっており、海外でも通用する資格です。
③IT検証技術者認定試験(IVEC)
一般社団法人IT検証産業協会(IVIA)が認定する、テストエンジニアの資格試験です。実務を重視した試験内容になっており、実務力を問う記述式試験が出題されることが特徴です。
テストのレベルは全部で7つあるのですが、本記事で紹介したキャリアフローと合わせると、レベル1・2はテスター向け、レベル3・4はデバッガー向け、レベル5・6・7がQAエンジニアやQAリーダー(マネージャー)向けといえます。
レベル3以上は、それ以下のレベルに合格していないと受験することができないので、確実に知識を積んでいくことが必要になります。
QA職に向いている人
どんな人がQAの仕事に向いているのかを5つご紹介します!
①細かい作業を繰り返し根気強く行える
デバッグやテストは長時間同じ作業の繰り返しになります。
そのため、集中力や根気強さがあり、なおかつ細部にまで注意を払えることが必須です。
②論理的思考ができる
デバッガーはバグが起こった際に、「なぜ起こったのか」原因を特定する必要があります。そのため原因から結果まで一気通貫して考えられる論理的思考が求められます。また、プランナーになった際にも、ゲームの収益や予算の根拠を正確に伝える必要があるため、論理的思考は重要になります。
③スケジュールや納期を守れる
ゲームのリリースに合わせて膨大な量のテストを行い、バグの検証・改善・レポートの作成を行うなど、デバッガーには仕事がたくさんあります。このため、マルチタスクが得意(抵抗がない)だったり、予定や納期をきちんと守れることがとても重要です。
④チームで何かに取り組めたり、コミュニケーションを円滑に取れる
QAはチームで取り組むことがあったり、エンジニアやプランナーと関わる機会もあります。そのため、きちんと相手と意思疎通をはかりコミュニケーションをとれることが必要です。
⑤さまざまな種類のゲームができる、好き
QAの仕事を行ううえで、必ずしも毎回自分の好きなゲームやジャンルをプレイできるとは限りません。苦手なゲームを延々とプレイするのはやや負担も大きいので、幅広いジャンルのゲームが抵抗なくプレイできたり、好きであると有利かもしれません。
▼ゲームデバッガーに向いている人の特徴はこちらの記事で詳しく解説しています!
QA職のキャリアパスと将来性
QAエンジニア・デバッガー・テスターが区別されている場合のキャリアパスは以下のようになります。
テスター ↓ デバッガー ↓ QAエンジニア・QAリーダー・プランナー |
上記はあくまで一例ですが、テスター・デバッガーとして経験を積んでから、QAエンジニア・QAリーダー・プランナーへキャリアアップすることができます。
また、既にエンジニアとしての経験が豊富にある場合などを除き、「テスター、デバッガー、QAエンジニアなど」という順でキャリアアップしていくことが一般的です。
テスター~デバッガー
まず、アルバイトなどでテスターになり、テストの流れを把握したりゲームにかかわる知識を蓄えた後、デバッガーとなります。
デバッガーになってからは、バグが起こった際の状況や発生頻度などの情報をレポートにまとめたり、レポートを基にして修正された後にもう一度バグがないかを検証します。これらの業務に熟知し、複数人でデバッグを行うチームをまとめるリーダーなどの経験を経てQAエンジニアになります。
QAエンジニア
QAエンジニアになった後は、QAリーダーと一緒にテスターやデバッガーがデバッグを行うための仕様書やテストケースの設計をしたり、デバッガーが作成したレポートをプログラマーやエンジニアに報告・改善案の提案を行います。
デバッグを行うだけでなく、デバッグ業務の効率化を図りたい方や、インフラ/サーバーエンジニアを目指している方におすすめです。
QAリーダー(マネージャー)
QAリーダーは、単にデバッグやテストを行うチェック作業者ではなく、「テスト要件定義」や「チームマネジメント」といったデバッグにおける上流工程を担います。
テスト要件定義とは、デバッグやテストを行う際にどういうテストが必要で、どういう動作が正解かを他の開発者たちと決めることです。
まずは要件定義でしっかりとテスト項目や想定挙動を定めます。そして、それらの定められた項目をしっかりとクリアしているゲームを作ることで、結果として製品の品質の向上につながります。
QAリーダー(マネージャー)は、「QAを極めたい!」「自分でもデバッグを行いつつマネジメントにも興味がある」という方におすすめです。
プランナー
デバッガーを経験した後は、プランナーに進む道もあります。
ゲームプランナーは、新タイトルの企画立案や制作準備、プロジェクトの進行などが主な仕事内容です。
▼ゲームプランナーの仕事内容についてはこちらの記事で詳しく解説しています!
デバッガーとして仕事をしていく中で、「ゲームがどんな仕組みで動いているか」が分かったり、現場の雰囲気や仕事の流れを把握できるため、プランナーへのキャリアアップも可能になります。自ら転職活動を行う方法もありますが、中にはデバッグとして従事している案件のなかで「プランナーをしないか」というオファーがくることもあるようです。
また、デバッグでバグの修正を行った経験を活かして、エンジニアやプログラマーになることも可能です。
デバッガーの将来性
デバッガーはソフトウェア開発において、品質担保と品質向上の役割を担う重要なエンジニアであり、ユーザーに寄り添う品質の良いサービスを作り出すために必要不可欠な存在です。
近年はAIなどを用いてテスト作業の自動化も進んでいますが、より複雑なバグの発見やユーザー目線での面白さの追及などは人の手による検証が必要なため、今後も需要のある仕事であり、将来性もあるといえるでしょう。
まとめ
本記事では、ゲームリリース前の重要な仕事である「QA」について、さまざまなQA職の違いやどんな人が向いているかをご紹介しました。
最終的に求められる知識やスキルは多いものの、テストやデバッグなど未経験からでも始めることができる業務もあり、QAエンジニアや他職種へのキャリアアップもできるなど、将来性のあるお仕事です。
未経験からゲーム業界に挑戦したい方や、とにかくゲームが好きでゲームを仕事にしたい方にもおすすめの職種です。
ぜひ、QAを通して、ユーザーから愛される素敵なゲームの開発に携わってみてください!
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