ゲームを語るとき、どうしても派手なバトルやステージ攻略といった「遊んでいる瞬間」のことばかりが注目されがちです。
けれども実際のゲーム体験は、それだけで成り立っているわけではありません。プレイの前後や合間に行う数々の活動もすべて含めて、一つの「UX(ユーザー体験)」になります。
この、ゲームを通じたUXを整理するためによく使われるのが「インゲーム」と「アウトゲーム」という考え方です。
ゲーム開発における設計や分業の観点からも重要なキーワードであり、近年のゲーム運営を語るうえで欠かせない概念となっています。
それでは、早速見ていきましょう。
インゲーム/アウトゲームとは
インゲームとは
インゲームは「実際にプレイするゲーム内の活動」の部分を指します。
たとえば、RPGの戦闘や格闘ゲームのコンボ、FPSの撃ち合い、パズルの解答、リズムに合わせた入力など、プレイヤーがリアルタイムに集中して楽しむ、「ゲームそのもの」の領域のことです。
体験の中心=「ゲームの核」といえる部分がインゲームになります。
ゲームジャンルごとに個性が強く、「体験」や「面白さ」が最優先される領域です。
仕様変更や試行錯誤が多いため、柔軟性のある仕組みが求められます。
アウトゲームとは
一方、アウトゲームは直接の操作から一歩引いた領域です。
インゲームをより深く楽しむための準備や管理、計画といった活動はアウトゲームにあたります。
具体例としては、キャラクターの編成や育成、デッキ構築、ガチャ、ログインボーナスの受け取り、オプション設定などです。
これらは汎用性を重視し、再利用やテストが容易で安定性のある「堅い設計」が求められます。
アウトゲームの設計はプレイヤーの長期的な定着や収益化に直結するため、ソーシャルゲームでは特に重要視されています。
インゲームとアウトゲームの関係
このように、インゲームは本編である「舞台」、アウトゲームは「舞台裏の支度」のような関係と言えます。
ただし、両者は完全に分離しているわけではなく、ゲームジャンルやタイトルによって境界が曖昧になることもあります。
たとえば、アドベンチャーゲームはほぼインゲームのみで構成されていますし、MOBA(※)のショップ画面のように、プレイ中に挟まる要素はインゲーム側で扱われる、といった具合です。
インゲームとアウトゲームの両方を理解し、整理することで、UI設計やゲーム全体の体験設計をより明確に捉えることができます。
※MOBA(モバ)=Multiplayer Online Battle Arenaの略、詳しくは下記記事でご紹介しています。
インゲームとアウトゲームを設計で分けるメリット
保守性と再利用性がUP
上述のとおり、アウトゲームはインゲームを存分に楽しませるために必要なデータ管理やUIが中心で、汎用的な仕組みが多く含まれます。
そのため、設計を堅牢にしておくことで再利用が可能になり、バグを減らし、将来のアップデートにも柔軟に対応することができます。
一方、インゲームは面白さを磨き込むために、試行錯誤が頻繁に行われる領域です。
両者を切り離しておくことで、アウトゲームは安定性を重視、インゲームは柔軟性を優先、という住み分けができ、インゲーム領域での思い切った挑戦もしやすくなります。
分業や効率化がしやすい
プランナー、エンジニア、UIデザイナーといった役職間で、それぞれの役割を明確にすることができるのも利点です。
バトル設計やアクション調整はインゲーム担当、報酬やガチャ設計はアウトゲーム担当、と分ければ、開発効率が高まりますし、品質管理もしやすくなります。
特に運営型のタイトルではイベント改修が頻繁に発生するため、アウトゲーム部分を独立して、安定的に設計することは大変重要です。
UX全体の最適化
UXの最適化という観点では「プレイヤーが次に何をすればいいか迷わない」ための導線づくりが大切です。
インゲームとアウトゲームの両方を適切に設計することで、プレイヤーの満足度を高めることができます。
例えば、バトルに勝利したら自然に育成画面へ進む、ログインしたらイベント情報がすぐ確認できる、といった流れがスムーズであれば、プレイヤーはストレスを感じることなく、攻略や収集に集中できます。
また、インゲームとアウトゲームを行き来するリズムも重要です。
戦闘で疲れたら育成で一息つく、育成で成果を感じたらまた戦闘に挑む――このサイクルが快適であれば、遊び続けるモチベーションが自然と高まります。
つまり、UX全体の最適化とは、ユーザーの「遊びやすさ」「わかりやすさ」「続けやすさ」をインゲームとアウトゲームの両輪で支える工夫です。
この両輪の違いを理解して適切に設計することが、UX戦略の基本といえるのです。
実際のゲームでみるインゲームとアウトゲーム
それでは、各ジャンルの実際のゲームタイトルから、インゲームとアウトゲームの具体例をみていきましょう。
● RPGの例
タイトル例:ペルソナシリーズ、ファイナルファンタジーVII リメイク
| インゲーム |
・戦闘 ・ダンジョン探索 ・各種イベント |
| アウトゲーム | ・装備、スキル編成 ・クエスト、報酬管理 ・日常パート |
●モバイル RPGの例
タイトル例:パズル&ドラゴンズ(パズドラ)、Fate/Grand Order(FGO)
| インゲーム |
・戦闘 |
| アウトゲーム |
・パーティ強化 |
● カードゲームの例
タイトル例:遊戯王、Hearthtone
| インゲーム |
・対戦、カード使用 |
| アウトゲーム |
・デッキ構築 |
● アクションゲームの例
タイトル例:デビルメイクライシリーズ
| インゲーム |
・ステージ攻略 |
| アウトゲーム |
・武器、スキル選択 |
● シミュレーションゲームの例
タイトル例:シヴィライゼーションシリーズ
| インゲーム |
・マップ攻略 |
| アウトゲーム |
・国家設定 |
● MMO(運営型)の例
タイトル例:モンスターストライク(モンスト)
| インゲーム |
・クエスト |
| アウトゲーム |
・編成 |
こうしてみると、インゲームは「そのゲームならでは」の個性を担う部分、アウトゲームは、他のタイトルにも共通しやすい、汎用性のある部分、という違いが見て取れます。
また、アクションゲームはインゲーム要素が大きく、SLGやカードゲームはアウトゲームの要素が強いといった具合に、ジャンルによってイン/アウトの比重は大きく違います。
まとめ
インゲームは「プレイの中心的な体験」、アウトゲームは「プレイを支える準備や管理」。両者の意味と役割を理解し、設計で分けることには大きなメリットがあります。
UIやUX全体を見渡してみると、アウトゲームの快適さがインゲームの楽しさを後押ししていることがよくわかります。
もちろん境界はジャンルごと、またタイトルごとに少しずつ違いますが、その違いを意識して眺めてみると「なるほど、ここはアウトゲームの工夫なんだな」などと気づけるはずです。
ゲームの見方がちょっと広がって、遊ぶ時間がより面白くなるかもしれません。
次に遊ぶときは、インゲームで盛り上がりつつ、アウトゲームの細かな仕掛けにも目を向けてみてください。意外な発見があるかもしれません。
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