最近のゲームはグラフィック精度を高めることに重点を置いている場合が多いですが、グラフィック精度を高めるためにポリゴン数が多くなってしまい、ゲームの動きが重くなってしまうことがあります。
しかし、「法線マッピング」という工程を経ることでゲームのグラフィック精度を落とさずに少ないポリゴン数で3Dモデルを制作できます。
では、「法線マッピング」とはどのような作業なのでしょうか。
法線マッピングとは
「法線」と「マッピング」とは
まず、簡単に3Dにおける「法線」と「マッピング」について説明します。
法線とは、面の「表」や「外側であること」を示すためにある、その面に対して垂直な線(ベクトル)のことです。
一方のマッピングとは、作成したモデルに表現したい模様や凹凸の画像(テクスチャ)を貼り付けることを言います。
法線マッピングは平面に凹凸を表現する
法線マップを簡単に表すと、光が入ってきたり反射する角度をベクトルによって調整することで、平らな面に凹凸があるように見せる技術を指します。
それでは、「平らな面に凹凸があるように見せる」とはどういうことなのか解説していきます。
例えば、1つの平面で凹凸のある石垣を表現するとします。
まず、適切な位置に、法線マッピングを用いて面から出ているベクトルを調整し、面に対して当たる光が均一ではなく、場所によって深さが変わるようにします。
次に、その面に石垣を表現するためのテクスチャを用意し、法線マッピングを施した面に貼り付けます。そこに光を当てることで事前に調整したベクトルに合わせて凹凸が表現され、あたかもその平面自体が石の凹凸に合わせて浮き出ているように見せることができます。
つまり、法線マッピングはあくまでも、凹凸に合わせたベクトルを設定しているだけで実際はただの平面です。
法線マッピングの具体的な仕組み
元々、3Dモデルを形成するモデリング作業ではより微細な凹凸を表現しようとしても限界があり、木材や皮膚の質感のような細かい微妙な凹凸を完全に再現することは難しいものでした。
しかし、法線マッピングを用いることで「どの部分にどのくらいの凹凸があるか」が調整でき、より細かい陰影表現が可能になりました。
また、法線マッピングを用いたモデルは「どの部分にどのくらいの凹凸があるか」がベクトルによって定められている為、光源(そのモデルに当てる光)の位置や角度を変えたとしても、きちんとその光源の角度に合わせて明るく見える部分や影になる部分が変わり(自然な位置に影ができ)ます。
ゲームで用いられる法線マッピング
ゲームでは、特にフォトリアル(実写に近い)な人物や怪物などのキャラクターの皮膚といった質感だけでなく、衣服のしわなどの細かい部分を表現するのに使用されます。
その中でも、もっとも用いられるのが人間を再現する場合です。
理由としては、法線マッピングを用いることでレンダリングの際にかかる処理負荷を減らすことができるからです。
通常、フォトリアルなキャラクターモデルを制作するには、かなり多数のポリゴン(多角形)を用いて髪の毛などまで精巧に表現する必要がありますが、これをメインキャラクター以外のすべてのキャラクターで行ってしまうと、ゲーム自体の処理負荷がかなり大きくなってしまいます。
そのため、メイン以外のキャラクターは、少数のポリゴンに法線マッピングを施して髪の毛や皮膚といった細かい凹凸を表現することで、1つ1つの処理負荷を軽減し、ゲーム全体の処理負荷も抑えることができます。
こういったことから、法線マッピングは多くのキャラクターが出てくる場合に用いられやすいです。
法線マッピングができるツールは?
法線マッピングはSubstance 3D Painterのような3D描画ツールや、MayaやBlenderといった3Dソフト、UnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンで行う場合が多いです。
法線マッピングに使用するテクスチャはPhotoshopやIllustratorといったツールで制作することもできますし、Substance 3D Painterのアセットに含まれている画像を使用したりすることもできます。
法線マッピングを実践してみたい方は、始めはアセットなどに含まれている画像を使用するところから始め、慣れてきたらPhotoshopなどを用いて自分でディテールにこだわっていきましょう。
また「まずは試したい」という方は、無料で利用できるBlenderを使用してみるのがおすすめです。
まとめ
法線マッピングは、レンダリングの際の処理負荷を減らしつつ、平面に凹凸があるように見せられる技術であることをご紹介してきました。
ゲーム開発で処理負荷を減らすことは、スムーズで快適なプレイに直結するため、法線マッピングはゲーム開発において重要な工程であると言えるでしょう。
法線マッピングに対する理解を深めるためにも、まずは少ない数の法線を用いた法線マップから挑戦してみてはいかがでしょうか。
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