ゲームやアニメーション、映画などで使用されている3DCGという技術を、恐らく誰もが日常的に目にしていると思います。今回は、そんな3DCGを作るツールである「Blender」について、3DCG初心者の方や使ってみたいという方に向けてご紹介します!
Blenderとは
Blenderとは、1998年にリリースされたオープンソースの統合型3DCG製作、2Dアニメーション製作、VFX向けデジタル合成、動画編集ソフトウェアです。
つまり、キャラクターや背景のモデリングからアニメーションを付けるところまで、3DのCGアニメーションを作る環境が一通りそろっているソフトということです。また、オープンソース(※)で誰でも無料で利用できるため、「まずツールを触ってみたい」という方にもおすすめです!
※オープンソースとは、ソフトウェアを作るためのプログラム(ソースコード)が一般に公開されていることを指し、有志によって継続的に改良が行われる開発方式でもあります。
Blenderでできること
3DのCGアニメーションを作る環境が一通りそろっていると説明しましたが、具体的に何ができるのか、3Dモデルの作成手順を追いながら、簡単にご紹介します。
モデリングでオブジェクト制作
モデリングとは3Dのキャラクターや建物などのモデル(造形物)を作っていく工程のことです。Blenderでは平面と立体のオブジェクトの制作が可能です。
いきなり複雑なモデリングはせず、まずは簡単な模型から作ってみましょう!
スカルプト
スカルプトは粘土造形のようなイメージで直感的に3DCGモデルの形状を制作する方法のことです。
上述のモデリングでは「ポリゴン」と呼ばれる多角形を用いて造形するため、丸みを帯びているものの作成はやや難しいですが、スカルプト機能を使うことでより簡単に丸みのあるものを表現できます。
操作に慣れてきたら、ポリゴンを用いる一般的なモデリングとスカルプトを使い分けてモデリングを行うと良いでしょう。
リトポロジー
リトポロジーはモデリングやスカルプトで作ったモデルの点でつないだ面(ポリゴン)をゲームや映像に適したデータに変換していくことです。
リギング
キャラクターなどを動かすための骨組みや、その仕組み自体を作ることです。
また、リギングを行うことで人や動物に設定した関節を滑らかに動かすことができます。
マテリアル・テクスチャ
モデリングで作ったオブジェクトの材質を設定できます。ガラスや金属、木材といった質感をリアルに再現できます。
テクスチャでは。モデルの凹凸や明るさを調整し、模様の表現を行います。
また、モデルに貼り付けるための木目といった画像をテクスチャ、画像をモデルに貼り付けることをテクスチャリングとも言います。
▼モデリングやテクスチャについてはこちらの記事で詳しく解説しています!
アニメーション
Blenderではアニメーション動画の制作ができます。モデルを自由に移動させたり、サイズを変更させたりできます。人型や動物型であれば実際に歩かせたり走らせたりすることも可能です。
ライティング
照明演出をすることで、より材質の質感を高められます。太陽やスポットなどの照明を好きな角度から当てられるだけでなく、モデル自体を光らせたり、影をつけることもできます。
リアルなライティングを行うことで作品への没入感を高められたり、照明の色味を変えることで見ている人に与える印象を変化させることができる重要な工程です。
エフェクト
CGで爆発を起こしたり、ビームを作ったり、ビルが崩壊する様子を作ることができます。
▼上述のライティングとエフェクトについてはこちらの記事で詳しく解説しています!
シミュレーション
Blenderでは炎や煙などの流体シミュレーションが可能で、液体や気体を発生させるなどの自然現象を再現でき、これをモデルで検証します。アニメーションと組み合わせることも可能なので人型を歩かせたときに髪をなびかせるような演出もできます。
レンダリング
ここまでの作業でできたモデルやアニメーションなどの作品を出力することです。3D空間にあるモデルやテクスチャなどが2次元の静止画として出力できます。
モーショントラッキング
撮影した映像とアニメーションを実写合成することができます。現実の風景の中に好きなキャラクターを登場させたりすることが可能になります。
また、そもそもモーションデザインとは、ゲームに登場するモノやキャラクターの動きを設定することを指します。動かしたい対象に手作業で動きをつける方法や、現実の人間やモノの動きをデジタル化してデータとして取り込む方法があります。
▼モーションデザインについてはこちらの記事で詳しく解説しています!
ビデオシーケンスエディター
撮影した動画や画像を読み込み、音楽や字幕の追加等の動画編集ができます。
Blenderを使うメリット
ここまで、3DCG制作の手順を追いながらBlenderでできることをご紹介しましたが、次に、Blenderを使うメリットを2つご紹介します。
①無料で初心者も気軽に使える
1つ目が、無料で利用できるという点です。
Blenderと比較されやすいMayaなどは、ゲーム開発などのプロの間でも使用されるツールですが、1か月36,300円かかるため、これから3DCG制作を始めたい方にとっては少しハードルが高いといえます。
そのため、Blenderは無料で上述のような3DCG制作における一連の機能を使用できるのは、「まずツールに触れてみたい」という初心者の方にとっては特に大きなメリットと言えるでしょう。
②日本語に対応している
Blenderは日本語に対応しており、有志が運営しているサイトでは、日本語でソフトのダウンロード方法や、ソフト内の言語設定の変更の仕方などが解説されています。
また、公式サイト以外でもYouTubeなどで有志の方がチュートリアルや解説動画をアップしているため、比較的学習もしやすいと言えるでしょう。
Blenderが役に立つ職種
現状として日本国内での3DCG作成はMayaというソフトが主流なのですが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を制作した「プロジェクトスタジオQ」は実際にBlenderを導入しています。エヴァンゲリオンの作中でも、一部のアニメーションがBlenderによって制作されているそうです。
このように、アニメーション制作や、それに伴う3DCGモデル作成、エフェクト制作などでBlenderを活かすことができます。
ゲーム業界でも、アニメーターや3Dデザイナーはもちろん、2DデザイナーやコンセプトアーティストでもBlenderの経験を活かすことができます。
PCの推奨スペック
Blenderは公式で、最低・推奨スペックを提示しています。
(https://www.blender.org/download/requirements/)
最低スペックはあくまでも最低なので、初心者だからと言って安易に選ぶのはおすすめできません。
ある程度Blenderに慣れ、作りこみたくなったり、同時にweb閲覧などを行ったりすると快適に作業できなくなる可能性が高くなります。したがって、推奨スペック以上のものがおすすめといえます!
本記事では、WindowsとMacに分けて推奨スペックをご紹介します。
Windows
OS :Windows 10 または Windows 11
CPU :8コア
メモリ :32GB
ディスプレイ :フルHD
外部デバイス :3ボタンマウス、ペンタブ
グラフィックプロセッサー:8GBのVRAM
Mac
OS :macOS 14(ソノマ)
CPU :アップルシリコン
メモリ :32GB
ディスプレイ :フルHD
外部デバイス :3ボタンマウス、ペンタブ
グラフィックボード:4GBのVRAM GPU
今回はCPUなど細かいパーツに関しては割愛しますが、とりあえず上記推奨スペックを満たすものを探してみましょう!また、BlenderはさまざまなOSに対応しているため、WindowsでもMac、Linuxでも使用可能です。
Blenderの始め方
Blenderは公式ホームページ(https://www.blender.org/download/)からダウンロードできます。オープンソースで世界中で常に開発がなされているため、アップデートが行われた際はすぐに新しいものをダウンロードしましょう!
Blenderの学び方
Blenderはオープンソースであるため、たくさんのユーザーがチュートリアル動画や記事を作成しています。例えば、YouTubeでも初心者向けのモデリングについての説明などの技術面だけでなく、ダウンロード後にやっておくとよい初期設定なども公開されているので、是非参考にしてみてください。
ツールだけでなく、勉強も無料でできちゃうなんて便利ですね!
Blenderの将来性
現在、ゲーム開発やアニメ制作の現場では、BlenderよりもMayaなどのツールの使用率が高いと言えます。しかし、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を始め、徐々にBlenderを用いて制作された作品が増えています。
無料で利用できる点や、PCのOSを選ばない点などから考えると、今後プロの現場でもBlenderが使用される機会が増えていく可能性もあります。
まとめ
本記事では、Blenderでできることや使い方を3DCG制作について触れながらご紹介していきました。
Blenderは3DCG制作に必要な動作を一通り行うことができます。まずはモデリングから始め、徐々にテクスチャやマテリアルを使用して自分の思い描く立体物を作ってみてはいかがでしょうか。
3DCGというと「専門知識や技術がないとできないんでしょ」と敷居が高く感じられるかもしれません。たしかに、制作において知識や技術は必要ですがあまり構える必要はありません!学習教材も多く、無料で始められるBlenderで、ぜひ自分の思い描く3DCGを作成してみてください!
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