
物語を「読む」だけでなく、「選ぶ」ことで展開が変わる、そんな体験を楽しめるのがノベルゲームです。
日本で生まれたノベルゲームは、今や国内にとどまらず、世界中のプレイヤーに支持されるジャンルとなりました。
今回は、そんなノベルゲームの成り立ちや特徴、そして時代ごとの発展についてご紹介していきます。
ノベルゲームとは?
ノベルゲームは、アドベンチャーゲームの一種で、主にテキストとビジュアル、音声を中心に、物語を楽しむゲームジャンルです。
プレイヤーの操作は画面をクリックして文章を読み進めるスタイルが基本で、場合によっては選択肢を選ぶことでストーリーが分岐することもあります。
ノベルゲームの特徴
ノベルゲームの特徴は、物語を読む体験とプレイヤーの選択による分岐が融合した、インタラクティブな構造にあります。
プレイヤーは、単にテキストを読み進めるだけでなく、物語の途中で現れる選択肢によって、ストーリーの展開や結末に関わっていくので、1つの作品内で複数のルートやエンディングを楽しめるのが魅力です。
また、画面構成はテキスト欄・キャラクター立ち絵・背景画像を組み合わせたものが基本で、表情変化や音声、BGMなどの演出が没入感を高めてくれます。
多彩なジャンル
ノベルゲームには、多彩なジャンルが存在します。
メジャーどころの「恋愛もの」や「ミステリー」に限らず、ホラー、ファンタジー、SF、サスペンス、伝奇、学園ドラマ、…等々、枚挙に暇がありません。
また、インディーゲーム開発の普及により、世界各地で小規模ながら創造的なノベルゲームが制作されており、最近では、社会問題をテーマにした重厚な作品も登場しています。
ノベルゲームの歴史と発展
続いて、ノベルゲームがどのように生まれ、発展してきたのかを見ていきましょう。
始まりは謎解きアドベンチャーゲーム
ノベルゲームのルーツをたどると、1980年代初頭に流行した、パソコン向けの謎解きアドベンチャーゲーム、テキストアドベンチャーに行き着きます。
初期のアドベンチャーゲームは、画像とテキストで示された謎を、ユーザーがキーボードで文章を入力して解いてゆくものでしたが、当時のパソコンには技術的な制約が多く、快適なプレイは望めませんでした。
この問題を解決するために、あらかじめ用意された選択肢を選ばせる「コマンド選択式」が採用されます。入力が簡略化され「謎解き」自体のゲーム性が弱まる中で、謎解きアドベンチャーは物語やギミックでプレイヤーを楽しませる方向へと進化してゆきました。
そして、この流れで1988年に登場したのが、ノベルゲームの原型とも言える『スナッチャー』です。
しかし、ストーリー重視のアプローチは「物語としてのおもしろさ」と「ゲームとしてのおもしろさ」の相反、という新しい課題にぶつかりました。
次の段落では、この課題を解決した「ストーリー分岐型アドベンチャー」というスタイルについて説明します。
ストーリー分岐型アドベンチャーの発展
前項の課題を、プレイヤーの選択による物語展開の分岐というインタラクティブ性によって見事に解決したのが、1992年に発売された『弟切草』です。
「サウンドノベル」と銘打たれた本作は、画面全体にテキストを表示し、サウンドによる効果的な演出や、選択肢で物語が分岐してゆく構成で大きな話題を呼び、ノベルゲームの可能性を広げました。
また、時期を同じくしてアダルトゲーム市場でも革新が起こります。
1992年に登場した『同級生』で確立された「キャラクターごとにストーリーが分岐する」という手法は、やがて「恋愛シミュレーションゲーム」へと発展していきました。この流れは、後の『ときめきメモリアル』や『CLANNAD』など、数々の名作へとつながっていきます。
海外ノベルゲームの発展
2000年代以降、Steamなどのプラットフォームの台頭により、ノベルゲームは海外でも徐々に人気を集めるようになります。
日本以外では相変わらず謎解きが主流だったアドベンチャーゲーム界において、ノベルゲームの表現手法は新鮮だったようで、日本製ノベルゲームのファンによる紹介や翻訳が行われ、やがて各地域で独自のノベルゲーム制作文化が形成され、発展していきました。
中でもインディー開発者たちによるオリジナル作品の登場が目覚ましく、近年ではLGBTQ+やメンタルヘルスなど、社会的なテーマや複雑な人間関係の表現に挑戦する海外ノベルゲームも増えており、ジャンルとしての奥行きはさらに広がっています。
ノベルゲームの名作・有名タイトル
ここで、ノベルゲームというジャンルを語るうえで欠かせない代表作をいくつかご紹介します。これらの作品は、ノベルゲームが「読むだけのゲーム」ではなく、プレイヤーの選択によって物語が変化する、体験型のメディアであることを強く印象づけてくれます。
『かまいたちの夜』
1994年発売 密室殺人と人間関係の恐怖を描いた、サウンドノベルの金字塔です。選択肢によって大きく変化する展開と、限られた登場人物の中から犯人を推理する構造が話題になりました。
また、音声・効果音・BGMを活かした演出はプレイヤーの感情に直接作用し、テキスト主体のゲームでも臨場感を出せることを証明しました。
特に、演劇的な無音(=不自然な静寂)の演出は家庭用ゲーム全般で見ても斬新で、ホラーでは定番の「静寂が恐怖感を引き立てる」手法は、この作品が先駆けとなって広まりました。
『ひぐらしのなく頃に』
2002年に発売した作品で、一見のどかな村に潜む惨劇を描いた、ループ型ホラーミステリーの傑作です。
同じ時間軸を何度も繰り返しながら謎を解き明かしていく「ループ構造」の物語はこれ以前にもありましたが、ホラー・サスペンスを組み合わせた点が画期的であり、現在も続く所謂「ループもの」ブームの火付け役となりました。
『Fate/stay night』
2004年発売 英霊たちとの戦いと信念を描く、伝奇バトルノベルの名作です。
重厚な世界観と綿密なキャラクター設定、異なる視点から一つの世界を理解していく多層的な物語構造が魅力で、多くのファンを獲得しました。後のFateシリーズの原点であり、ビジュアルノベルの金字塔です。
『STEINS;GATE』
2009年発売 タイムリープと陰謀が交錯する、緻密なSFサスペンスです。
タイムリープ理論を取り入れた緻密でドラマティックな展開とダイナミックな伏線回収、そして感動的なクライマックスが高く評価されました。
『CLANNAD』
2004年発売 家族と絆をテーマに、涙を誘う人生ドラマを描いた感動作で、所謂「泣きゲー」の代表格です。
ゲームとしては珍しく「人生」をテーマにしており、個別ルートをクリアすると解放される「AFTER STORY」では、家庭を持った主人公の苦悩と成長が描かれ、多くのプレイヤーの心を打ちました。
『428 ~封鎖された渋谷で~』
2008年発売 実写映像×多視点で展開する、臨場感あふれる群像劇です。
複数の主人公の視点を切り替えながら進む物語は、シナリオの完成度と没入感が非常に高く、「ファミ通クロスレビュー」にて、ノベルゲームとしては初の満点を獲得したことでも話題になりました。
ノベルゲームに仕事としてかかわるには?
ノベルゲームの制作には、シナリオライターやプログラマーをはじめ、さまざまな職種が関わっています。
ゲームシナリオライター
ノベルゲームのシナリオライターには、文章力だけではなく「プレイヤーに体験してもらう物語」を設計する意識が必要です。
まずは、伝えたい感情や展開を具体的に思い描き、それをプレイヤーにどう伝えるか、を常に考えるようにすると良いでしょう。
ゲームプログラマー
ノベルゲームのプログラマーは、物語や演出を実際に動かす役割を担います。
物語をプレイヤーに届ける演出者として、また、創作と技術の橋渡し役として、シナリオや演出チームと協力しながら作業する柔軟さが求められます。
▼ゲームプログラマーについてはこちらで詳しく紹介しています!


制作ツール
ノベルゲーム制作の魅力は、誰でも物語を「形」にできることです。制作ツールには多くの種類がありますが、用途やスキルに応じて選ぶことが大切です。
ここでは初心者と中級者に向けた主要ツールをご紹介します。
初心者向けノベルゲーム制作ツール
ティラノビルダー/ティラノスクリプト
直感的な操作でノベルゲームが作れる無料ツールです。公式サイトにはガイドやチュートリアル、サンプルゲームが豊富に掲載されており、初心者でもすぐに始められます。
また、完成したゲームは、ゲーム投稿サイト「ノベルゲームコレクション」にて公開可能です。
※参考:ティラノビルダー公式サイト
ラノゲツクールMV
ティラノビルダーと違ってこちらは有料になりますが、素材が豊富で、あらかじめ用意されているコマンドボタンをドラッグ&ドロップするだけで、簡単にゲームが製作できます。
また、公式サイトで30日間の無料版も提供していますので、いきなり有料版は心配という方は、まずは体験版から触ってみるのがおすすめです。
なお、完成したゲームはアプリ内で公開・共有することもできます。
※参考:ラノゲツクールMV 公式サイト
pli-log
プログラムやスクリプトの知識がなくても、ブラウザ上で手軽にノベルゲームを作成できるツールです。
トークアプリのように、アイコン+吹き出しの形で表示ができる「ログモード」は、SNSのチャット感覚でノベルを楽しめるので、会話形式の演出と相性が良く、人気があります。
中級者向けノベルゲーム制作ツール
吉里吉里Z
高機能なノベルゲームエンジンです。
個人・商用問わず無料で利用でき、配布も自由で、多くの商業タイトルでも利用されており、本格的なノベルゲーム制作に適しています。
また、演出やシステムのカスタマイズ性が非常に高く、軽量で動作が安定しており、
低スペックPCでも快適に動作します。
Light.vn
個人・商用を問わず無料で利用でき、配布も自由です。
エディター上でスクリプトを編集すると、即座にプレビュー画面に反映されるため、演出や画像配置が容易です。
また、日本語コマンド主体のスクリプトで、英語が苦手な人にも親しみやすい設計になっています。
まとめ
ノベルゲームは、アドベンチャーゲームの流れをくみつつ、物語性とインタラクティブ性を突き詰めることによって、独自の進化を遂げてきました。
技術的制約への対策をきっかけに発展したこのジャンルは、現在では世界中のクリエイターに刺激を与え、さまざまな物語表現の実験場とも言える存在になっています。
読者の想像力と感情に深く働きかけるノベルゲームは、今後もゲームの一ジャンルとして、そして一種の「体験する文学」として、発展を続けていくことでしょう。
ゲームクリエイターのお仕事探しならConfidence Creator
Confidence Creator(コンフィデンスクリエイター)はゲーム・エンタメ業界に特化した人材事業を展開する株式会社コンフィデンス・インターワークスが提供する総合人材(派遣・無期雇用派遣※・紹介)サービスです。
ゲーム・エンタメ業界の大手・上場企業を中心に300社以上の取引実績を持ち、常時月間300件以上の新規案件を保有。 コンフィデンスクリエイターにしかない非公開案件も多数ございます。
これまでゲーム・エンタメ業界で築いてきた信頼関係の強さを活かし、制作現場を熟知したコンサルタントがゲーム・エンタメ業界で働くみなさまのご経歴やご希望、これからのキャリアビジョンに応じて最適なマッチングを行います。
ゲーム・エンタメ業界でのキャリアアップを目指す方も、ご自身のキャリアについて漠然と悩みを持っている方も、まずはお気軽にご相談ください!
※無期雇用派遣とは?
株式会社コンフィデンス・インターワークスの「正社員」として雇用契約を結びますが、実際の就業先は、ゲーム・エンタメ企業での常駐勤務となります。「正社員」としての安定した雇用がありながら、大手企業をはじめとするさまざまなプロジェクトに携わりスキルを積むことができますので、成長意欲の高い方におすすめの働き方です。