
VTuberがテレビや広告、リアルイベントに登場することが増えたことで、バーチャルという存在が一般にも広く認知され、国内外から注目を集める成長産業へと発展しています。
そんな盛り上がりの裏側で活躍しているのが、配信がスムーズに進行するようにサポートをしたり、リアルタイムで表情や動きが自然に見えるよう尽力する「エンジニア」の存在です。
本記事では、VTuber業界におけるエンジニアという仕事にスポットを当て、その役割や魅力について紹介します。
VTuberのエンジニアとは
VTuberの活動を技術面から支え、安定した配信や多彩な表現を実現するためのサポートをするのがエンジニアの役割です。
配信や収録の場面ではもちろん、日々の準備や環境設備においても、VTuberがスムーズに活動できるように裏側から支援しています。また、必要に応じてトラブル対応をしたり、新しい演出や技術の導入に挑戦することもあります。
VTuberの世界観や魅力を技術で形にする、そんな「裏方のクリエイター」ともいえる存在が、エンジニアなのです。
仕事内容
VTuberに関わるエンジニアの業務は幅が広く、実にさまざまな仕事が行われています。
現場や開発のどちらに関わるエンジニアであるか、などで仕事内容も大幅に変わるため、ここではエンジニアをいくつかのカテゴリに分けて仕事内容をご紹介します。
1.配信アプリの開発やUI設計
VTuberが配信中に使用するアプリやツールは、VTuberの活動を支える大切なインフラのひとつで、その開発や設計を行うのがフロントエンドエンジニアの仕事です。
映像や音声の管理、アバター操作、コメントの確認など、配信に必要な機能をひとつの画面でまとめて扱えるようにすることで、VTuber本人の負担を減らし、よりスムーズなパフォーマンスを実現させます。
これらの配信ツールは、配信スタイルや演出の幅に合わせてカスタマイズされることも多く、既存ツールの活用にとどまらず、エンジニアが独自の配信アプリや機能の開発を行なうケースも少なくありません。
さらに、新たな要素を組み込み、わかりやすく直感的なUIを設計することで、VTuberが本番に集中できる環境を整えます。
企画に応じて新機能を追加したり、運用面の改善を重ねていくことも含めて、VTuberの活動を支える重要な仕事です。
2.モーションキャプチャーやトラッキング
モーションキャプチャーやトラッキングは、VTuberの「動き」や「表情」をリアルタイムで正確に取得するための技術で、モーションキャプチャーエンジニアが主に担当しています。体の動きや顔の表情などをセンサーやカメラで読み取り、そのデータをもとにアバターが動く仕組みになっています。
使用する機材や技術はさまざまで、Webカメラやスマートフォンを使った手軽なものから、全身にセンサーを装着する本格的なモーションキャプチャーシステムまで、活動スタイルによって適切なものが選ばれます。
裏側で精密な調整を行うこの業務は、VTuberの「動きの説得力」を生み出す大切な役割です。
3.アバター制御
アバター制御は、キャラクターの「見せ方」を整えるための技術です。
前述したモーションキャプチャーやトラッキングによって取得された「動き」や「表情のデータ」を使用し、そこから配信画面上で自然に表現できるように調整・補正していくのがこの工程です。
モーションキャプチャ技術、配信プラットフォームの連携など、幅広い技術を要するため、モーションキャプチャーエンジニアやネットワークエンジニアが担当します。
アバターは、配信の「顔」とも言える存在であり、表情が豊かに動いたり、口の動きが声としっかり同期することで、VTuberの存在をよりリアルに感じてもらうことができます。
4.背景や舞台の設置
配信やイベントのシーンに合わせて、アバターが立つ背景や舞台をデジタル空間上に構築するのは、主にCGエンジニア、Unity/Unreal Engineエンジニアの業務です。
現実のスタジオとは異なり、バーチャルの世界では、背景や小道具、照明、カメラアングルまで、すべてをソフトウェア上で設計・配置する必要があります。
たとえば、配信画面の奥行きや雰囲気を演出する3Dステージの設計、視線誘導を考えたカメラワークの設定、環境に応じたライティング調整など、求められる作業は多岐にわたります。
特にライブやコラボ企画などでは、空間全体の統一感や演出のクオリティが視聴体験を大きく左右するため、細かな調整やチーム内での連携も欠かせません。
こうしたバーチャル空間の「舞台装置」を技術の力でつくり上げることで、VTuberの表現力はさらに広がっていくのです。
▼VTuberに関わるその他の仕事はこちらでもまとめて紹介しております!
求められるスキル
それでは、VTuberに関わるエンジニアになるためには、具体的にどのようなスキルが求められるのでしょうか。
今回はいくつかある中から、特に重要な3つのスキルについて解説をしていきます。
1.Unity操作スキル
VTuber業界における配信やイベント演出の多くは、主にUnityというゲームエンジンを使って映像や空間を構築するのが一般的です。
アバターの動き、舞台の構成、照明やカメラ演出まで、あらゆる表現がUnity上で組み立てられており、このツールを自在に扱えるかどうかが、エンジニアの実務力に直結します。
たとえば、Unity上で配信画面の背景に立体的なステージを作ったり、VTuberの動きに合わせてカメラを自動で切り替えたりすることで、より臨場感のある配信演出が実現できます。
また、髪の揺れを自然に見せる物理演算や、照明・エフェクトによる世界観づくりも、Unityを使用するからこそ可能になる演出のひとつです。
さらに、Unityの基本操作はもちろん、プレハブやタイムライン、シェーダーといった構造の理解と活用力を求められることも多く、エンジニアとして活躍するうえで欠かせないスキルです。
2.プログラミングスキル
VTuberの配信やイベントを支えるシステムは、見た目の演出だけでなく、裏側の動作や連携によって成り立っており、その根幹を担うのが、プログラミングスキルです。
たとえば、モーションキャプチャーの情報をアバターに反映させる仕組みや、リアルタイムで配信が途切れず動作するための処理には、プログラムによる制御が不可欠です。
また、機材ごとの挙動を調整したり、UIやツールをカスタマイズしたりする場面でも、コードを書いて制御する力が求められます。
なお、プログラミングの使用言語はC#やPython、JavaScriptなど環境によって様々ですが、システムの仕組みを理解し、必要に応じて修正・実装ができる力は、VTuberのエンジニアにとって大きな強みとなります。
3.コミュニケーション能力
VTuberの活動現場は、タレント・マネージャー・ディレクター・デザイナーなど、さまざまな人と協力しながら進行するチーム型の現場です。
その中でエンジニアは、技術的な専門性を持ちながら、全体の進行に合わせて動ける「つなぎ役」のようなポジションを担うことがあります。たとえば、配信中に不具合が起きた場合、原因を即座に判断し、わかりやすく状況を説明するうえで、難しい技術的な話をかみ砕いて伝える力が必要です。
また、VTuber本人のこだわりや演出意図をヒアリングし、それを技術的にどう実現できるかを一緒に考える場面もあります。
こうした理由から、技術と感性の間に立って調整できるコミュニケーション力は、現場で非常に重宝されるスキルです。
向いてる人の特徴
続いて、VTuberに関わるエンジニアに向いている人の特徴を紹介していきます。
1.課題の発見/解決が得意な人
VTuberの配信現場では、予期せぬトラブルや技術的な課題が発生することも少なくありません。配信中にカメラがうまく反応しなかったり、アバターの挙動が乱れたりと、細かな不具合が表面化する場面は多々あります。
そうしたときに、不具合の原因を冷静に分析し、素早く解決できる力はとても重要です。
特に、配信現場での素早いトラブル対応や、解決の提案ができると「この人がいれば安心」とチームから頼られる存在になります。
実際に、そうした対応力のあるエンジニアは、VTuber本人やディレクターとの信頼関係も築きやすく、重要な案件や現場に抜擢されることも多いでしょう。
2.ユーザー視点が持てる人
どれだけ高度な技術を使っていても、実際に視聴するユーザーやアバターを操作するVTuber本人が「使いやすい」「楽しい」と感じられなければ意味がありません。
そのため、常に「誰のための機能か」を意識しながら開発・調整を行う「ユーザー視点」をもつことが、エンジニアにも欠かせないスキルです。
たとえば、表情の切り替えをもっと直感的にしたり、UIをよりシンプルに見やすくしたりといった配慮は、ユーザー視点を持っているからこそ生まれるアイデアです。
技術だけでなく「どうすればもっと快適に、楽しく使えるか」という体験の設計まで考えられる人は、エンジニアとしての適性があります。
3.細かい作業が好きな人
アバターの表情調整や、カメラの動作設定、タイミングの微調整など、VTuberに関するエンジニアの仕事には「地味だけど重要な作業」が数多くあり、細部へのこだわりが配信の完成度や没入感を大きく左右します。
たとえば、アバターの目線の微妙な動きや、背景の照明が切り替わるタイミングひとつで、視聴者の印象は大きく変わります。
また、表情のブレをフレーム単位で調整したり、カメラの動線を繰り返しシミュレーションするなど、正確さと根気が求められる作業も多く、VTuber演出を支えるうえで重要な工程です。
そのため、地道な作業を楽しめる人、コツコツと調整を重ねられる人には、その才能を発揮できる職業といえます。
やりがい、大変さ
VTuberの配信やイベントを「魅せる」ための技術を支えるのが、エンジニアの仕事です。
リアルタイムに動くアバターや、没入感のある空間演出、スムーズな配信体験など、その多くはエンジニアの手によって実現されています。
特に、配信や映像演出の面は、裏側でエンジニアが支えているからこそ成り立つ領域です。
アバターの動きが滑らかに再現され、舞台や照明が予定通りに動き、視聴者が「違和感なく楽しめている」という状況そのものが、エンジニアの働きの証といえます。
何事もなく配信が無事に終わったとき「誰にも気づかれなかったけれど、自分がいたから成功した」と実感できるのは、この職種ならではのやりがいです。
それは、演出面での称賛だけでなく、トラブルを未然に防ぎ、裏から支えきった者だけが味わえる達成感でもあります。
一方で、すべてがリアルタイムで進行する配信現場では、想定外のトラブルや挙動に即座に対応する冷静さや判断力が求められます。準備段階では完璧だったはずのシステムも、本番環境では何が起こるか分からないのが「生配信」の難しさです。
また、技術的な細かい調整や機材・ツールのアップデート対応など、地道な作業も多く、見えない部分の努力が求められる仕事でもあります。
それでも、自身の手がけた技術がVTuberの魅力を最大限に引き出し、ファンの心を動かす瞬間をつくれるのは、VTuberに関わるエンジニアならではの大きな魅力です。
キャリアパスや将来性
VTuber業界の拡大にともない、エンジニアの活躍の場もますます広がっています。
技術面から配信やイベントを支えるだけでなく、より演出や設計の部分に深く関わっていくことで、個々の専門性を活かしたキャリアの構築が可能です。
たとえば、Unityやモーショントラッキングなどの分野で経験を重ねていくことで、映像演出のリーダーやプロジェクトの技術ディレクションを任されるようになるケースもあります。
また、複数の配信現場を経験する中で、トラブル対応やシステム構築の知見が評価され、技術統括ポジションに進むことも十分にあり得ます。さらに、映像演出やUX(ユーザー体験)に関心がある人は、演出プランナーや空間設計の方向へとスキルを広げていくことも可能です。
このように、配信・映像を支えるエンジニア職は、縁の下の力持ちでありながらも、演出の最前線に立つクリエイティブなポジションです。
そのため、新しい表現を技術で実現するスキルは、今後のVTuber市場においてますます求められていくため、将来性の高い職種だと言えるでしょう。
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まとめ
本記事では、VTuber配信を支えるエンジニアの役割や仕事内容、求められるスキル、そして将来性について紹介しました。
配信やイベントの裏側で、技術的な課題を解決し、表現の幅を広げていくこの仕事は、地道な調整やトラブル対応も多い一方で、自分の手でつくりあげた体験がファンの感動につながるという大きなやりがいがあります。
また、リアルタイム性と表現力の両立が求められるVTuberの現場だからこそ、エンジニアとしての技術力や提案力を存分に発揮できる場面も多く、チャレンジしがいのある仕事です。
今後も拡大が見込まれるVTuber業界の中で、エンジニアとして活躍を目指している人は、ぜひ本記事を参考に挑戦してみてください。
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