ソフトウェア開発やゲーム開発では、製品をリリースする前にバグが無いかをテストする「デバッグ」と呼ばれる作業が行われます。
デバッグ作業は実に膨大な量がありますが、そんなデバッグ作業を「効率よく」行うために利用されるのが「バグトラッキングシステム(BTS)」です。
本記事では、バグトラッキングシステムがどのようなものなのか、どのようなツールがあるのかなどをご紹介していきます!
バグトラッキングシステム(BTS)とは
バグトラッキングシステムは英語ではBug Tracking Systemと表記し、略して「BTS」とも呼ばれます。日本語だと「障害管理システム」という意味になり、ゲーム開発においては、この障害(不具合)のことを「バグ」と呼びます。
つまり、バグトラッキングシステムはテストによって発見されたバグを登録し、それが修正完了されるまでを追跡できるシステムということです。
そして、バグトラッキングシステムが備わっているソフトウェアやサービスをバグトラッキングツールと言います。
バグトラッキングシステムでできること
バグトラッキングシステムでできることを、デバッグ作業のワークフローに沿ってご紹介します。
①バグの登録
テストを通して発見したバグを登録します。
バグが起きた場所が分かりやすいように該当箇所の画面をキャプチャーして添付したり、バグ対応の緊急度、「どのような種類のバグなのか」という分類をします。
ゲーム開発において、この作業は主にテスターとデバッガーが行います。
▼ゲームデバッグ(QA)についてはこちらの記事で詳しく解説しています!
②バグの確認
登録されたバグが本当にバグなのか、仕様によるものなのかを確認し判断します。
また、プログラムに問題は無いが動作する環境が原因でバグが発生する場合や、デバッガーの見間違いというケースもあり、このような場合は修正作業は行われません。
バグと認められた場合、修正が必要になるので「誰が(デバッガーが行うかエンジニアにお願いするかなど)」「どのような方針で」対応するかを指定します。
③バグの修正対応
「バグの認定」の工程で指定された通りにプログラムや仕様書の修正を行います。
④修正対応の確認
修正を行った部分に対し、正常に作動するかを改めてテストします。
きちんとバグが修正されていたらそのバグに対する作業は終了し、まだ修正が必要な場合は、再度修正対応を行います。
バグトラッキングシステムでは、このようなワークフローの管理を行うことができます。
さらに、バグトラッキングシステムの多くがWebサーバー上で閲覧・操作されるため、開発チーム全体で情報の管理や進捗の把握ができます。
バグトラッキングシステムのメリット
バグトラッキングシステムのメリットは、効率よくバグを管理できることです。
ゲーム開発を例にすると、作品はリリース前に必ずテストプレイやデバッグを行い、あらかじめ不具合を取り除きます。しかし、テスト段階ですべてのバグを修正することは難しく、リリース後に起きてしまった不具合やユーザーが発見したバグを、その都度修正・アップデートします。
このとき、出てきたバグをただ直しているだけでは、「そもそもバグの報告はしたのか」「誰がどこまで進めているか」がわからなくなってしまったり、修正漏れが起きる可能性があります。
しかし、バグトラッキングシステムでは、緊急度・優先順位・進捗などさまざまなバグ情報の共有や検索が簡単にできるため、非常に効率よくバグ管理ができます。
おすすめのバグトラッキングツール
ここで、おすすめのバグトラッキングシステムツールを3つご紹介します。
※料金はすべて2025年1月6日時点
①Backlog(無料プランあり)
Backlogは「プロジェクト管理に必要な機能が1つに」なっており、スケジュールや課題の進捗管理、情報共有までを包括的にサポートしてくれるツールです。
バグ管理においては
・修正履歴、対応履歴が確認できる ・作業の状態(未対応、処理中、処理済み、完了)を共有できる ・ウォッチ機能(課題が更新されるとお知らせが届く機能)で進捗を把握できる |
という3点で大きく役立ちます。
また、モバイルアプリもあるためスマートフォンにアプリをインストールしておくことで、いつでも・どこでもタスクやバグの管理を行えるのもBacklogの利点といえます。
利用料金
Backlogの料金プランは無料プランを含めて5つです。
また、有料プランのいずれも無料トライアルがありますので、まずは気になるプランの無料トライアルから使ってみても良いかもしれません。
プラン | 料金 | 開発規模 |
フリープラン | 無料 | 個人、少人数向け |
スタータープラン | 月額2,970円(税込) | 個人向け |
スタンダードプラン | 月額17,600円(税込) | 小規模チーム向け |
プレミアムプラン | 月額29,700円(税込) | 小~中規模チーム向け |
プラチナプラン | 月額82,000円(税込) | 中~大規模チーム向け |
公式サイトではプレミアムプランがおすすめされています。
スタンダードプラン以上であれば利用できるユーザー数に上限が無いため、チームの規模やツールの容量の大きさで選ぶと良いでしょう。
また、無料で利用できるフリープランは、個人や少数での利用を対象としており一部機能が使えない点にご注意ください。
②Redmine(基本無料)
Redmineはオープンソースのプロジェクト管理ソフトで、会社やチームで取り組むべき業務やプロジェクトの作業を記録・管理したり、社内で情報共有ができるツールです。
やるべきことを「チケット」と呼ばれる機能に登録することで管理を行います。
チケットにはガントチャート(スケジュールや進捗、達成率を表で視覚的に分かりやすく表したもの)やカレンダーを表示させることが可能です。
また、チケット機能だけでなく、他の人と共同で使えるメモ機能の「Wiki」やメンバーへの「お知らせ配信」などもできます。
Redmineは、ゲーム業界でもさまざまな職種でよく使用されるツールなので、ゲーム業界を目指している方は、ぜひ1度触れてみると良いでしょう。
利用料金
Redmineは基本的に無料で利用できます。またオープンソースということもあり、利用者が情報交換などを行う「コミュニティ」も充実しています。
また有料のクラウドサービスにアップグレードすることも可能で、条件やサービスによって金額が異なりますので、気になる方はぜひ公式サイトをチェックしてみてください!
クラウドサービスにアップグレードすることで、どこからでもアクセス可能になるためリモートワークでも情報共有が簡単になったり、社内のサポート管理をメールではなくRedmine上で行えるようになります。
また、RedmineベースのクラウドサービスであるPlanioでは、Web会議に必要なビデオ通話機能もワンタップで利用できます。
③Jira(無料プランあり)
Jiraはスピード重視のチームの連携と開発をサポートするためのツールです。
「カンバン」というタスク管理機能では「ToDo」「進行中」「レビュー中」「完了」の4段階の設定があり、さらに進捗管理をしやすいガントチャートやレポート機能もあります。
レポート機能では課題の解決にかかった時間や、作成済みの課題と解決済みの課題の割合などを確認することができ、効率アップのためのヒントが得られます。
また、Jiraにはカンバンやバグ管理などのテンプレートが用意されているため、難しい設定が不要ですぐに使い始めることができるという利点があります。
利用料金
Jiraの料金プランは全部で4つあります。
また、有料プランのいずれも無料トライアルがありますので、まずは気になるプランの無料トライアルから使ってみても良いかもしれません。
プラン | 料金 | 開発規模 |
Free | 無料 | 作業を計画して追跡する効率を上げる 小規模なチーム向け |
Standard | ユーザー1人あたり月額990円 | さらに多くのものを協力して構築することに重点を置く成長途中のチーム向け |
Premium | ユーザー1人あたり月額1,770円 | 作業のコラボレーションと追跡の方法を拡大する必要がある組織向け |
Enterprise | 営業窓口に要問い合わせ | グローバルな拡張、セキュリティ、ガバナンスの各ニーズのある企業向け |
Standard以上の利用人数の上限は同じなので、どのくらい詳細な設定を行いたいかや、サポートの手厚さで選ぶと良いでしょう。
また、現在はユーザー1人あたりの月額料金が設定されており、プロジェクトに参加している人数(Jiraを使用している人数)に応じて料金が請求される仕組みになっています。
ゲーム開発でBTSを使用する職種
ゲーム開発においては、デバッガーはもちろん、プランナー・プロジェクトマネージャー・サーバーエンジニア・デザイナーなど幅広い職種でBTSを使用します。
ゲーム業界で働くためにBTSの使用経験は必須ではありませんが、デバッガーを中心に使用経験が歓迎される場合もあります。
無料で利用できるツールも多いので、ゲーム業界を目指す方は職種にかかわらず1度触れてみると良いでしょう。
まとめ
本記事では、ゲーム開発に欠かせないデバッグ作業を効率的に行うために必要な「バグトラッキングシステム(BTS)」についてご紹介してきました。
すでにバグトラッキングシステムを採用している現場が多いと思いますが、ツールによってタスク管理やレポート作成機能などさまざまな使いやすい機能が備わっています。
ぜひバグトラッキングシステムを有効活用して、デバッグ作業やゲーム開発を効率よく行ってみてはいかがでしょうか?
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